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問題を笑い飛ばす


弁護士 佐々木 満男

■本稿は恵みの雨"連載記事「あらゆる問題は解決できる」の2000年7月号の原稿です。



1.問題を笑い飛ばす


問題を深刻に悩む代わりに、これを笑い飛ばすことができたら、どんなにいいでしょう。まじめな人ほど、問題を深刻にとらえて思い悩んでしまいます。するとますます気持ちがふさいで、問題も解決できず、健康を害したり、時には自殺にまで追い込まれることもあります。

悪い冗談は有害ですが、健全なユーモアは、健康な生活のために非常に大切です。健全なバランスを保つためには、まじめな人ほどユーモアを大切にすべきです。落語家や漫才師の中にも、意外にまじめな方が多いそうです。


2.時効忘却事件

Mさんは豪快な弁護士で、毎日、朝から晩まで「ワッハッハッハ!」と大きな声で笑っています。ある時、知人の弁護士Aさんが真っ青になって訪ねてきました。ある大きな事件で相手方と交渉しているうちに、うっかりしてこちらが要求している金銭債権の時効期間が過ぎてしまったというのです。裁判になっても、相手が時効を主張すれば、敗訴は明らかです。「敗訴すれば依頼者が損害を受けるだけでなく、自分の責任も追及されかねない」ということで、深刻に悩んでいました。

私は名案を思いつかず、Mさんに相談すると、彼は話を聞いた途端に笑い出しました。「ワッハッハッハ! これは面白い!弁護士がよくこんな初歩的なミスをしましたね。これは特ダネニュースだ。ワッハッハッハ!」 。

同席したAさんがあっけにとられていると、Mさんはその場で事件の相手方の弁護士Bさんに電話をして、「ワッハッハッハ! 先生、今面白い話を聞いたんですよ。弁護士が、係争中の債権の消滅時効を中断するのを忘れたらしいんですよ。実にこっけいですね。ワッハッハッハ!」と笑っています。

Bさんもつられて 、「ワッハッハッハ! それは面白い。そんな弁護士がいるんですね。でも、もし自分がそんな立場にたったら笑えませんね」と言ったそうです。そこでMさんはすかさず、「その弁護士というのが、あなたの相手方のA先生なんですよ。かわいそうだから時効など主張しないで、正々堂々と実質的な法律論で争ったらいかがですか、ワッハッハッハ!」と笑い飛ばしました。

Mさんの笑いに押されて、Bさんは自分の依頼者と相談して、時効を主張せずに争うことにしました。そして、最終的には裁判にはならずに、両当事者の納得のゆく和解が成立したそうです。


3.笑いは百薬の長

実は、M弁護士は大変まじめな性格で、若いころ、強度のノイローゼで精神科医に通ったことがあるのです。「あなたは何でも深刻に考えすぎます。いちばん良い治療法は、どんな物事の中にも面白いことを見つけて笑うことです」、というのが、医師の処方箋でした。Mさんはこれを忠実に実行して、「笑いのプロ」になったのです。

聖書には、「陽気な心は健康を良くし、陰気な心は身を枯らす」(箴言十七章二十二節)とあります。「笑いは百薬の長」と言われ、「笑う門には福来る」とも言われています。

ノーマン・カズンズ教授はカリフォルニア大学医学部で「笑い」について教えています。彼は、「笑いと治癒力」という著作の中で、「よく笑うこと」が重い病気の治癒のために大きな効果があることを強調しています。彼自身も四十九歳の時、「回復可能性五百分の一」という難病である膠原病を患いましたが、「よく笑うこと」によって奇跡的にいやされた体験を持っています。そして、「五百分の一の奇跡」という本を書きました。彼は、「病気は笑いごとではないが、笑いごとであるべきだ」と語っています。「笑っている場合ではない時こそ、実は笑うべきなのだ!」ということができます。

これを実践したのが、「四十過ぎたら自分の顔に責任を持て」と言った、あの深刻な顔の肖像で有名なリンカーン大統領だから意外です。激戦のつづく南北戦争の最中、リンカーンはよく冗談を言って皆を笑わせました。ホワイトハウスで、面白い話をしてもだれも笑わないと、こう言ったそうです。「諸君、どうして笑わないのかね?私は昼夜を問わず恐ろしいほどの緊張の連続にさらされている。笑わなければ死んでしまいそうだ。諸君にも、私のようにこの笑いの薬が必要なんだよ」。

こうして自分を緊張から解放し、歴史に残る「奴隷解放宣言」を書き上げたのです。リンカーンは若いころ、自殺するのではないかと周囲の人から心配されるほどの心の病に苦しんだそうです。きっとこの時の体験から、ユーモアの大切さを学んだのでしょう。


4.いつも喜べ

パウロは、クリスチャンが、「何事も思い煩わないで、いつも喜ぶ」べきであると、強調しています。これは、パウロがキリストのために命を懸けるほどの熱烈な福音伝道者となってからも、数多くの思い煩いと苦悩を体験してきたからではないかと思います。
それらの試練の中で、パウロはますます神に近づき、神に寄り頼むことによって、イエス・キリストとの深い交わりの中に、「人知ではとうてい測り知ることのできない神の平安」(ピリピ四章七節)を得ることができたのです。

「いつも喜びなさい」と言われても、なかなか喜べるものではありません。通常は、喜びは感情のレベルの事柄だからです。しかしパウロは、自分の意志によって喜びなさい、「喜べない時こそ、大いに喜ぶべきなのだ!」と言っているのです。(ヤコブ一章二節)

この秘訣は、「主にあって喜ぶ」(ピリピ四章四節)ことです。「主にあって」とは、「主との交わりによって」ということです。喜べない時こそ、自分の意志によって深く祈り、キリストの語られるみことばをしっかり聞くようにするのです。やがて、「神はどんな問題でも解決してくださる」、「イエス・キリストこそがあらゆる問題の解決である」との確信が生み出され、それに伴う喜びが湧いてきます。こうして、私たちは問題を笑い飛ばすことができるようになるのです。

 

あなたはわたしの敵の前で、わたしの前に宴を設け、わたしのこうべに油をそそがれる(詩篇二十三篇五節)

わたしがこれらのことを話したのは、わたしの喜びがあなたがたのうちにも宿るため、また、あなたがたの喜びが満ちあふれるためである(ヨハネ十五章十一節)



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